小説「千尋の闇」を読んで

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日付は忘れましたが、読売新聞の「つれづれ」という書評コラムに「譲さんのマイベストミステリー:再読にも堪える翻訳ミステリー」という記事が載っておりました。

私の好きな作家であるロバード・ゴタードの小説「千尋の闇」が第2位に載っており、書評を読み、内容をところどころ思い出しました。

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この小説の主人公ではありませんが、話の重要な中心人物であるエドウィン・ストラフォード(架空の人物)は1910年のイギリスのアスキス政権における新進気鋭の青年閣僚でした。
実在したアスキス政権のアスキス首相、閣僚ウインストン・チャーチルロイド・ジョージが彼の同僚としてストーリーの中に登場します。

石油の歴史においても、同様にアスキス政権のウインストン・チャーチルロイド・ジョージが登場し、大きな影響を与えていました。

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そんなこともあり、もう一度、「千尋の闇」を読んでみました。

青年閣僚ストラドフォードが突然、閣僚の座を追われ、婚約者も去って行き、世の中から取り残されました。そして数十年の失意の生活の後、事故により死亡しました。

この小説の主人公である元歴史教師のマーチンはポルトガル領マディラ島にあるストラフォードの自宅を買い取ったセリックという実業家からストラフォードが何故失脚し、事故死したか原因の調査を依頼されました。

マーチンは半世紀以上前に書かれたストラフォードの回顧録(メモワール)を基に、自分の元妻の一族などストラフォードが関係した場所を訪れ、関係者の調査を開始します。

調査していくうち、ストラフォードは自分に背を向けたエリザベスを恨むことなく、幸せを祈って自ら身を引いたストラフィードの純粋さにマーチンは惹かれ、彼の名誉回復を誓いました。

しかし、マーチンは心がやさしいけれど、優柔不断で誘惑に弱い性格が出て、妨害や策略に乗せられ翻弄されます。特に野望を持つ美人歴史研究家の誘惑に負け、彼女の意向聞き、雇い主の調査、ストラフォードを名誉回復を止めようとします。しかし、調査断念の直前、それを何とか回避します。

そして、マーチンとエリザベスは発見したメモワールの追記(ポストスクリプト)より、ストラフォードの失脚と事故死の原因を知ることになりました。

エリザベスは初めて、ストラフィードの自分に対する純粋で無償の愛を知り、後悔の念にかられました。

そして、最後に大きな陰謀が待ち受けていました。

この小説は2回目ですが、1回目同様に寝不足になるほどやめられなくなりました。
読んだ後、ストラフィードとマーチンの心の優しさに再び、心を動かされました。特に、ストラフィードの無念さを思うと涙が出ました。

そして、冒頭に出てきた詩を最後に理解できました。

げにわれはきみの古巣に帰りきぬ
荒れし野に幾とせふりて辿りきぬ
いにしえをきみよ今こそ語れかし
きみ去りて闇に遙けき日々なれど

再び私が現れて驚いているだろうね
なぜこんなことに?片時たりとも君を忘れたことはない
あのことについて話をさせてくれまいか
君を失い、私は今もなお立ち直れないでいるのだよ。