藤原正彦著「国家の品格」を読んで

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ベストセラーになっている「国家の品格藤原正彦著(新潮新書)を読んでみました。そして私が関心を持った箇所だけ取り上げてみます。

著者は最近の情勢から「日本を含めすべての先進国で社会の荒廃が進んでいる。その原因は産業革命以来地球を支配してきた西洋的倫理、近代的合理精神の破綻である」と言っています。

1900年の段階では植民地主義帝国主義はきちんした論理が通っている。
「お前たちは劣等な民族である。劣等な民族は自ら自分の国を治められない。そのままにしたら、殺し合いや伝染病がはびこり、飢餓で死ぬ人も出てくるだろう。だから、劣等な民族のために、優秀な民族であるイギリス人が統治してあげる」といったのです。
ようやく、植民地主義帝国主義が悪いと認知されたのは60年前の第2次大戦後ある。

共産主義はすべての生産手段はすべての人が共有する。それによって生まれた生産物もみな共有する。そうして、貧富の差のない平等な、公平な、幸せな社会ができる」と言っていました。
しかし、17年前、共産主義の家元、ソ連が崩壊し、大失敗しました。

現在の徹底した市場経済主義、競争社会、実力主義はいかなる組織においても互いに激しい競争をさせ、無能なものからどんどん追い落とし、有能者だけを残し、新しい有能者を採用し続けることで国が裕福になってくると影響力のある政府、経済界トップの大部分の人達、マスコミが言っています。これは論理的に筋が通っており、一番良いに決まっています。

その論理が社会全体を覆いつつあるのをみると、それは誤りだと大声で叫びたくなると著者は言っております。
論理的に正しいからといってそれを徹底していくと、人間社会はほぼ、必然的に破綻につながってしまうと著者は危惧しています。

それに対し、古来からある日本人の「情緒」と「形」が「論理」を補完し、日本、世界を救うと言っています。
情緒とは自然に対する繊細な感受性であり、悠久な自然に対し、はかない人生を対比し、そこに美を発見する「もののあわれ」という情緒のことである。

形とは、人間の行動基準や価値判断のための座標軸となる「道徳」であり、それは「武士道精神」がそれにあたる。
その中で最も重要なのが「惻隠(そくいん)」(弱者への愛)であり、市場経済原理の社会の弱肉強食の世界では特に重要であると著者は述べています。

最近の世の中の流れをみて、私が現役のサラリーマンだったら、昨今のアメリカ流市場経済主義、能力主義に対し、ついていけるか不安を覚えていました。
そして、テレビの評論家や政府の高官の言葉を聞き、世の中がその方向に流れていくのを感じ、自分の考えは時代遅れになってしまったのかと思い、退職していて良かったと胸を撫で下ろしてました。

以前、読んだ、ダニエル・ヤーギン著の「石油の世紀」(翻訳「日高義樹,持田直武」)は原題が「The Prize(褒美)」になっていますが。この「The Prize」はウィストン・チャーチルが「支配権は冒険に対する褒美」であると言ったことばから取ったそうです。(第二次大戦中~大戦後、イギリス首相を勤めたあのチャーチルです。)

1908年初め、イギリス人がペルシャで石油を発見し、その後、海軍が軍艦の燃料を石炭から石油に転換することを決定し、政府が51%投資し、アングロ・ペルシャ・オイルを設立しました。そして、1914年、海軍大臣チャーチルが戦争に備え、海軍の管理下に置いたということでした。

イギリスの植民地主義の論理やチャーチルの言葉は1900年当時は正しかったかもしれないがこの論理のもとに搾取された中東や他の国々は当初はともかく、何十年と搾取されれば、不満が積もり、爆発するだろうと思います。
yaseta.hateblo.jp

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yaseta.hateblo.jp昨今の中東問題も欧米に対する過去の欧米の論理が影響しているのではないかと思いました。