「28万円(10万ルピー)という超低価格の自動車を2008年秋から販売する」発表し、世界に話題を提供したインド最大の財閥タタ・グループを率いるラタン・タタ会長は、またまた興味ある話題を提供しました。
28万円のインドの超低価格自動車「ナノ」
それは圧縮空気で動く自動車「エアカー」を1年以内にインド国内で販売すると発表したことです。
エアカーを開発したのは南フランスニース近郊のカロスにあるベンチャー企業「モーター・デベロップメント・インターナショナル(MDI)」です。
MDI社はフォーミュラ・ワン(F1)のレーシングカーのエンジン設計なども手掛けた航空機関連エンジニアであるギー・ネグル氏によって1991に設立された会社です。
MDI社は1990年代後半から圧縮空気エンジンや試作車の開発を行い、エアカー「MiniCATs」を製作しました。エアカーは圧縮空気だけで100km走行可能で、それにガソリンなどの補助エンジンを使い圧縮空気をつくることで走行距離は800kmまで延びるそうです。
2008年の3月、ニューヨークのモーターショウに出品し、実用に耐える走りをしたということで注目を浴びました。
MDI社は2007年2月インドのタタ財閥傘下のタタ・モーターズと提携し、エアカーの商用化を進めており、ラタン・タタ氏はこれまでMDIのプロジェクトに約3000万ドル(32億円)を投資していたのです。
MDIは2008年9月にエアカー「OneCATs」をフランス国内で販売する予定です。そして、タタ財閥傘下のタタ・モーターズはMDI「OneCATs」のインドでの生産販売権を手に入れ、来年、生産・販売するということだったのです。
タタ財閥は2007年に世界第9位のイギリス・オランダ系鉄鋼メーカー「コーラス」を買収して世界第53位だったタタ・スチールを世界第5位の鉄鋼メーカーにしました。
2007年にはフォード傘下にあったイギリスの高級自動車「ジャガー」と「ランドローバー」を約26億ドル(2800億円)で買収し、世界を驚かしています。
最近、このように、財閥、大企業、政府系ファンドなどの傘下の企業はブランド力や技術力がない場合、グループの巨大な資本を背景に、かつての名門ブランドを持つ企業や技術力の高い企業をいとも簡単に買収して世界のトップ企業にのし上がってきています。
ブランドや技術は長期にわたり実績を積み、改善・改良し、蓄積しなければなりません。
苦労して蓄積した技術を売るのではなく事業や企業を丸ごと売却したり、買収されるということは経営が立ち行かなくなれば、しかたがないかもしれませんが、技術に長期に携わり蓄積した技術者や関係者は割り切れない気持ちがすると思います。