覚醒の巨象「インド」

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かつて「ジャパンアズナンバーワン」だった日本の次に「漢江(ハンガン)の奇跡」を生んだ「トラ」の韓国が経済成長を成し遂げ、現在、経済成長を続ける「アジアの工場」である「昇龍」の中国に遅れること数年で「覚醒の巨象」インドや「立ち上がるライオン」のスリランカが経済成長を続けています。

スリランカをより深く知ろうとすると、インドについても基本的な知識が必要であることがわかりました。

そう思っていたところ、今日の読売新聞にイギリス・オランダ系のヨーロッパ大手(世界第9位)鉄鋼メーカー「コーラス」が世界第53位のインドの「タタ・スチール」の9,600億円の買収提案を受け入れると報じました。

インドで数十の企業を傘下に収めるタタ財閥の企業の一つであるタタ・スチールの生産量はコーラスの1/4のに過ぎませんが、買収後は一気に世界5位の日本のJFEスチール次に躍りでることになります。

2006年5月世界最大の鉄鋼会社ミッタールスチール(オランダ)が世界第2位アルセロールの買収工作に対し、攻防を繰り返していますが、ミッタル・スチールのオーナーはインド人の大富豪ラクシュミ・ミッタルという人です。

国籍はインドではありませんがインド人オーナーのミッタール・スチールと買収成立後のタタ・スチールと世界17位のSAILを含めるとインドは世界の鉄鋼王国と言えます。

世界の鉄鋼メーカー        粗鋼生産量(万トン)
アルセロール・ミッタル         10963
1. ミッタール・スチール(オランダ) 6298
2. アルセロールルクセンブルグ)  4665
3. 新日本製鉄(日本)        3291
4. ポスコ(韓国)          3142
5. JFEスチール(日本)      2957
タタ・スチール・コーラス         2278
6. 上海宝鋼集団(中国)       2273
7. USスチール(アメリカ)     1926
8. ニューコアアメリカ)      1845
9. コーラス(イギリス)       1818
15. 住友金属(日本)         1753
17.  SAIL(インド)        1655
53.  タタ・スチール(インド)      460
英誌メタル・ブリテンの2005統計(読売新聞2006.10.26より)

インドはITのプログラミング費用がアメリカや日本の半分で英語ができるため、10年位前からアメリカのIT企業の多くが投資しています。日本も数年前からシステム開発を委託するようになっています。

戦後、イギリスから独立を勝ち取ったカリスマリーダー「ネルー」が登場し、社会主義の道を選択し、ソ連型の経済システムを導入し、公共部門や新しい事業はすべて国が管理することにしました。

しかし、既存の民間企業は国有化せず、商業と小規模な企業は民間に委ね、タタ財閥やビルラー財閥など民間の大規模な企業グループには手をつけませんでした。
タタ・エアは例外で国有化されエア・インディアになりました。

1960年頃ごろになると計画経済にほころびがでてきて、1960年から70年にかけて、多くの貧しい人々はインドに見切りをつけ、イギリスやアメリカに移住しました。

その人々が懸命に働き、移住先で実業家や専門家として成功しています。アメリカの低料金モーテルの46%がインド人の経営であり、イギリスの小売業のかなりの部分をインド人が占めており、また海外での製造業や商業の大企業を設立しました。

ミッテロールのオーナーもその一人と思われます。

海外にでたインド人は華僑に対抗して印僑と呼ばれ、インド経済に影響を与えるほど力をつけてきました。

インドは1989年ソ連共産主義の崩壊を目の当たりに見てようやく、ソ連型経済システムの失敗を認識するようになりました。

そして、インドのあるエリート高官の一人が「われわれは欧米の議会制度が根付くインド社会に、ソ連の経済体制を移植しようとした。悪酔いするカクテルだった。」

ようやく、インドのエリートは二日酔いから目覚めたときには、日本、韓国は経済発展を遂げ、中国が経済成長を続けている最中であることに気がついたのです。

それからは経済政策を変え、猛然と中国を追撃するようになりました。

yaseta.hateblo.jp【参考】
【インド】
1. 世界の国々の歴史7「インド」、鳥山孟郎、岩崎書店
2. 「市場対国家」上下、ダニエル・ヤーギン他(著)、山岡洋一(訳)、日本経済新聞社、2001年