バイオガソリン用アルコール需要増でオレンジ果汁やマイネーズが値上げ

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5月(2007年)に入り、明治、森永のオレンジ果汁飲料を10%値上げしたことや6月にキューピーのマヨネーズを10%値上げすることが伝えられました。

 

理由はオレンジ果汁の生産量を世界で6割を占めるというブラジルでオレンジからバイオ燃料向けとしてサトウキビへの転作が急増し、世界的にオレンジ生産量が減少しておるためです。

 

また、マヨネーズは材料として食用油を使っており、その食用油の原料となるトウモロコシや大豆などがアメリカでバイオ燃料の原料として使用され食用油用が減少したからだそうです。

 

昨年の2006年初め、サトウキビがバイオ燃料向けに増加し、原油価格と砂糖価格が連動するようになりました。

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高騰した石油の代替エネルギーの一つとして、また、地球温暖化引き起こす温室効果ガスCO2対策としてバイオ燃料が脚光を浴びてきましたがブラジルはそれ以前の1925年からサトウキビからのエタノールを自動車燃料として使っており、数年前に20~25%ガソリンと混合することを義務づけており、現在、40%まで切り替えが進んでいます。(*1)

 

アメリカでも2007年に2017年までに石油生産量の20%をエタノールに切り替えるという目標を設定しました。(*1)

 

4月7日の読売新聞に石油元売10社が共同でフランスからバイオ燃料とてETBEを7800KL輸入したと報じ、4月27日にETBEを混合したバイオガソリンを首都圏のガソリンスタンドで試験的に販売したと伝えました。

 

バイオエタノールのガソリンへの混合は二つの方法があります。

 

1.Ex方式:エタノールをガソリンに直接混合する方法(x:ガソリンに対するエタノールの割合で日本の目標エタノール混合率は3%でX3となる)

 

2.ETBE方式:エタノールとイソブテンの触媒反応でETBE(エチル・ターシャリー・ブチル・エーテル)を作り、これをガソリンに混合する方法

 

1990年初め、ガソリンのオクタン価向上剤としてMTBE(メチル・ターシャリー・ブチル・エーテル)が使用されていました。しかし、自動車廃棄ガスとして大気中に含まれたMTBEは微生物が分解しないため、微量でも環境汚染引き起こすという報告があり、日本では2001年末にMTBEの生産が自主的に中止され、石油元売会社はMTBEのガソリンへの添加を中止しました。

 

そして、バイオ燃料の使用とともに浮上してきたのがETBEのガソリンへの添加です。ETBEは環境汚染物質でないとしてスペイン、フランスでは2003年からドイツは2004年からガソリン添加を開始しています。

 

ETBEはこれまでMTBEを製造してきた装置を転用できるためコスト的に有利です。日本でもこれらの実績を踏まえ、今回のバイオガソリン販売を実施したわけです。

 

ヨーロッパでは農業団体は余剰対策として直接アルコール混合のEx方式を求めていますが自動車、石油業界はアルコールの水分や蒸気圧上昇などで品質上、流通上の対策必要としてETBE方式を主張しています。日本の石油業界も2005年にETBE方式採用に向けて検討していますがいずれにしろエタノールは必要です。

 

ヨーロッパはエタノールの原料としてテンサイや余剰穀物で3%は調達可能であります。

 

アメリカはとうもろこしやその他穀物で現在、3.5%アルコール混合ガソリンを実現しており20%までを計画中です。

 

ブラジルは当初から豊富なサトウキビから作るアルコールを混合したガソリン用の自動車を使用するという国の政策があり、歴史があります。そして、現在、サトウキビで40%のアルコール混合ガソリンを実現しています。

 

上記の国々は原油が高騰し、アルコールをガソリン添加しても採算がとれるようになり、地球環境保護のため、農業政策のためバイオ燃料を使っています。

 

日本は2010年までにバイオ燃料を年間50万kl導入すると京都議定書の目標計画を2005年に承認しましたが、現在、バイオエタノール混合率は3%なので21万klにしかなりません。

 

また、食べる穀物も自給できない日本は高騰した原油を購入し、値上がりした食料を輸入しなければならないうえ、バイオ燃料用のバイオアルコールもほとんど輸入に頼るしかありません。

 

現在、国の研究機関がプロジェクトを組んでバイオ燃料としての作物の生産や確保の検討や実験を行っていますが、石油の確保、食料の確保、温暖化対策としてのバイオアルコールの確保、ガソリン混合率は今後、日本が解決していかなければならない重要課題の一つになりました。

 

追)
私が石油会社に在職中の1990年代にガソリンのオクタン価向上剤としてMTBE製造装置が建設され知っていましたがそのMTBEが環境汚染物質ということで使用禁止になるとは思ってもおりませんでした。

 

【参考】
1.読売新聞、2007.4.7、4.27、4.29号
2.バイオエタノールの自動車燃料としての利用について、2005.5.18、石油連盟
3.クーリエ・ジャポン、2007.6号、Vol.032-----(*1)