イスラム金融方式と巨額なオイルマネーで経済成長を始めた中東諸国

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2007年3月、東京赤坂の防衛庁跡地東京ミッドタウンができ、その中に高さ248メートル、54階の東京で一番高いビル「東京ミッドタウンタワー」ができゴールデンウィークは多くの観光客が押しかけました。

 

ちなみに「東京ミッドタウンタワー」は日本で4番目の高さで日本一は296メートルの横浜のランドマークビルですが世界一は台北にある101階、高さ509メートルの台北101ビルです。

 

先日、テレビで中東のUAE(アラブ首長国連邦)のドバイには高さ355メートルのエミュレーツタワー始め超高層ビルが10個近く建設されており、現在、世界一の509メートルの台北101を抜く800メートルの「ブルジュ・ドバイ」を建設中です。さらに、高さ1000メートルの「アル・ブルジュ」が計画されているから驚きです。

 

UAEだけなくカタールサウジアラビアなど中東諸国は最近、急激な経済成長を見せていますがこれまでイスラムの人々はイスラム法に制限され投資などビジネスを行うのが難しかったのに活発におこなわれるようになったのはなぜでしょうか。

 

イスラムの人々の生活や社会はすべて聖典コーランにある規範に基づいて行動します。その中で良く知られているのが①利子取得、②豚肉、③酒、④ギャンブル、⑤ポルノの5つの禁止事項です。社会や生活で発生する事柄がこれらの禁止事項など行動規範を規定しているイスラム法(シャリア)に適合するか否かの判断を下すのは宗教関係者やイスラム法学者です。

 

そのため、資本主義では普通に行われている金融や出版や賭博の事業に制限が加えられ発展しませんでした。ところが、最近、金融立国を目指してマレーシアがイスラム式金融方式を開発し成長してきました。そのイスラム式金融方式が他のイスラム系諸国が採用し、タガが外れたようにビジネスが急速な発展を始めました。

 

たとえば、次のような仕組みを作りました。
資金調達はスクークというイスラム金融方式の債券を発行することにより投資や個人へ貸し出しする資金を調達する仕組みにした。

 

投資家は事業に投資する場合は利子を受け取れないので出資金に相当する分を配当で返済してもらう仕組みにした。

 

商品売買取引は銀行が売り手から購入し、銀行と販売会社の利子に相当する分を上乗せして買い手に売り、銀行は手数料などを差し引き売り手に返すことで売買契約を成立させる仕組みにした。

 

個人へのクレジット貸し出しやローンの仕組み
クレジット会社が個人ローンビジネスをやる場合会社はダイヤモンドを所有します。顧客が10万円を借りにきた場合、まず、顧客にダイアモンドを11万円で販売し、即座に10万円で買い戻し顧客に10万円の現金を支払います。すると顧客は「10万円の現金」と「利子相当分と元金分の借金(ローンなど)11万円」が残ります。そして顧客はこの11万円を分割払いで返済していきます。

 

保険は小額の保険料で多額の保険金を得る場合があるのでギャンブルと見なされ禁止されていました。しかし、1990年代後半イスラム式保険「タカフル(相互扶助)」が開発され、最近、急拡大しています。

 

イスラム式保険タカフルの仕組み
タカフルの会社が集めた「保険料」を「手数料など会社の取り分」と「残りの顧客に払う保険金分」を明確に区分し管理する仕組みにした。

 

中東の国やお金持ちは自国の経済を成長させるため巨額のオイルマネーを国際金融市場につぎ込んでおり、また中東国内でもインフラ整備やビジネスを増やしています。

 

特にUAEのドバイでは法人税や関税をなくし、イスラム式ビジネスモデルを提供し、優遇措置を提供し企業誘致をして今では、世界中の企業が押し寄せています。現在、インフラ整備、ホテルや観光施設やビルなどが信じられないようなスケールと数で建設が行われているそうです。

 

イスラムの経済発展に比例してイスラムの法律「シャリア」に適合するか否かを判断する審判件数が増加し、しかも複雑、高度化してきており、特に、複雑で高度な案件を判断するイスラム法学者からなる委員会「シャリアボード」の人材が不足しておるそうです。

 

イスラム金融方式は資本主義の方式とどこがちがうのか良くわかりません。その昔、日本の坊さんが酒を般若湯と言って飲んでいるのと同じように聞こえるのですが-------。


【参考】
1.「週間ダイアモンド」、2007.3.24号