地球温暖化対策「二酸化炭素削減のための15の対策と目標12のくさび」

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EU地域では二酸化炭素排出量を目標値として企業などに細かく割り当て削減した企業がその削減量を取引所に商品として売りに出し、目標値未達成の企業が買うという排出権取引が始まっています。

 

 

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日本では排出権取引は企業の国際間競争力を損なうだけで地球全体の二酸化炭素削減につながらないと訴えていましたが銀行や東京証券取引所は検討を始めているそうです。

 

7月の北海道洞爺湖サミットで報告される地球温暖化対策についての事前の会議「各国閣僚級の会合」が先日、千葉幕張で開かれ、話合われるなど温室効果ガス削減対策の会議や話題は頻繁に報道されますが現状の削減対策は不十分で地球温暖化の影響が世界地域に現れ始めています。

 

National Geographic 2007年10月に載った記事は温室効果ガスなどの二酸化炭素の排出量を削減する方向性を理解する資料として参考になります。

 

その記事とはプリンストン大学の「スティーブン・パカラ」と「ロバート・ソコロウ」が米国の科学誌「サイエンス」に発表した論文【地球温暖化を安定させるための12のくさび】の解説です。その解説のさらに概略を記述します。

 

地球を取り巻く大気中の二酸化炭素は地表表面の熱を宇宙に逃がさず吸収します。したがって、二酸化炭素の濃度により地球表面の温度を変化します。

 

18世紀産業革命以前は二酸化炭素濃度が280ppmほどでそれまでの地球の平均気温を14℃に保ってきましたがその後の産業の発展と人口の増加とともに石炭・石油などの燃料消費も増大し、二酸化炭素もしだいに増加してきました。

 

1950年代後半には、地球の大気中の二酸化炭素濃度は315ppmに達していました。

 

現在は350ppmで、毎年約2ppmの割合で増えつづけているそうです。この二酸化炭素ppmという増加量は無視できない値で地球温暖化をかなり加速する値でこれまでで地球の平均気温を0.5℃以上も上げてきているそうです。

 

大気中の二酸化炭素がさらに増えると地球温暖化が進み氷や雪の大半が解けはじめ、季節と降水パターンが変化し、海水面は上昇してきます。

 

その危険域は二酸化炭素濃度450ppmといわれ、その危険域450ppmを超えると、グリーンランド南極大陸の西側の氷床が解けだし、海水面が一気に上昇すると警告しています。

 

この数値はあくまで推定と言っていますが目安にはなるはずだとパカラ氏らは主張しています。そして、このまま何も手を打たないで二酸化炭素濃度が年2ppmずつ増えつづけると、あと35年で危険域450ppmに達して地球を危機に陥れると警告しています。

 

【CO2削減のための15の対策と目標「12のくさび」】
「スティーブン・パカラ」と「ロバート・ソコロウ」が提唱する「くさび」というのは既に実用化されているか、実用化のめどが立っている技術を使って、二酸化炭素を確実に削減する対策を言います。たとえば、低燃費自動車、エコ住宅、風力発電エタノールなどのバイオ燃料使用や排ガスから炭素を分離して二酸化炭素地下貯留システムを備えた石炭火力発電所建設などです。

 

また、生活の中でエネルギーの無駄使いをやめ比較的容易な課題も含みます。例えば、今後10年間に耐用年数が過ぎる白熱電球を小型の蛍光灯やLEDに世界中で置き換えるなどです。また風力発電太陽光発電用パネルの設置やできるだけエネルギー使わない生活スタイルに変える努力をすることです。

 

【Ⅰ.エネルギー効率の向上】
1.20億台分の車の燃費を現在の2倍の25km/リットルにする
2.車1台当たりの年間走行距離を半減させ、8000kmにする
3.冷暖房や電気器具の効率を25%向上させる
4.石炭火力発電の発電効率を40%から60%に向上

 

【Ⅱ.CO2の回収・貯留】
5.CO2の回収・貯留システム(CCS)を石炭火力発電所800基または天然ガス火力発電所1600基に導入
6.車10億台分の燃料を生産する石炭使用の水素工場にCCSを導入
7.1日48億リットルを生産する石炭使用の合成燃料工場にCCSを導入

 

CO2地下貯留について

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【Ⅲ.低炭素エネルギーへの転換】
8.1400基の大型石炭火力発電所天然ガス火力発電所に転換
9.原子力発電所の効率を現在の3倍にし、石炭使用の火力発電所を削減する

 

【Ⅳ.代替エネルギーと自然界への再固定】
10.風力による発電量を25倍に増加
11.太陽光による発電量を700倍に増加
12.風力による発電量を50倍に増やし、自動車世燃料電池の水素を生産
13.世界の耕作地の約6分の1を使ってバイオエタノール燃料の生産を50倍に
14.森林伐採の全面禁止
15.不耕起農法などの環境保全型農業をすべての農地に拡大し土壌からのCO2放出を減らす

 

くさび1個分はCO2排出量を炭素換算で年間10億トン削減する対策である。
2057年までに現状の半分にするためは上記の12個分(120億トンの炭素排出量を削減)のくさびを実行する必要がある。 以上

 

【蛇足】
数年前から地球温暖化問題は人類の危機として世界的にとりあげられ、種々の対策を打ち出されていますが、1998年の京都議定書で決めた二酸化炭素削減目標を日本など未達の国が出ており、また中国やインドなど目標値がない国の大量排出で二酸化炭素は増加しており、緊急に確実な削減対策の実行が求められています。

 

地球温暖化は自然が人類につきつけた「自然と人類の滅亡を予告する警告書」です。次の世代と地球上の生物が生存可能な未来を残すために、関係者には既に利用でいる技術や新しい技術の利用を推進していただき、われわれは生活スタイルを省エネルギー型に変えて行く必要があると思いました。

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【参考】
(1)「EU排出権取引本格化」記事、読売新聞、2008年2月3日
(2)「温室ガス産業別削減 道険し」記事、読売新聞、2008年3月7日
(3)「二酸化炭素をめぐる新たな方程式」、NATIONAL GEOGRAPHIC、2007年10月