アマチュア音楽家を証券化してデビューアルバム資金を調達するサイト「スライス・ザ・パイ」

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サブプライムローン問題で世界の金融機関が巨額の損失を出したことで、住宅供給会社や不動産会社は住宅や土地を証券化し資金調達しているということがわれわれ一般の人も知るようになりました。

 

今度はアマチュア楽家(アーティスト)の能力を証券化して、音楽市場にデビューするためのアルバム資金を調達する方法を考え、2007年7月にスタートし、アルバム資金を調達したアーティストが徐々に増えているそうです。

 

インターネットのウエブサイト「スライス・ザ・パイ」(www.slicethepie.com)を株式市場に見たて、登録ユーザーから資金を調達しようとするものでこのアイデアを考えたのがイギリスの「ディビット・コーティアダットン」というIT企業で働いていた人です。

 

ウエブサイト「スライス・ザ・パイ」(Slicethepai.com)の概要
アーティストはこのサイトを使い、条件を満たせばアルバム制作費用を手に入れることができます。

 

まず、アーティストはプロフィールとデモ曲を£20(4200円)支払いアリーナ(Arena)登録します。アリーナでは3段階の評価が待っています。

 

1.スカウト・ルーム(Scout Room)
ファン(スライス・ザ・パイに登録した投資家)はデモ曲を聴き、評価します。高い評価を受けた上位20人のアーティストのみ第2ステージのショーケースに進みます。

 

2.Showcase(ショウケース)
ショウケースではアーティストが一口10ポンド=10株として(10株×210円/£=2100円)で1500口(1万5千株)以上集められるかファン投票により決められます。合格すると第3ステージで融資をうけることができます。

 

3.Get Finance(融資取得)
アーティストは1500口以上集めたことで、アルバム制作費用1万5千ポンド(315万円、£1=210円)の融資を受けることになります。

 

発行株数は1株(上場時の株価£1)として1万5000株(1万5千ポンド)となります。投資したファンはそのアーティストの株式を手に入れます。

 

アルバムの売れ行きやその後の人気で株が変動や需給が発生し、アルバムに対する株価が1.47ポンドになったとするとアーティストの価値(株式では時価総額)は2万2050ポンド(463万円)となります。

 

アーティストは著作権と録音した原盤の権利を持ちます。「スライス・ザ・パイ」はアルバムが1枚売れるたびに£2(420円)のロイヤルティ(印税)を受け取ります。そして売り出してから2年後に「スライス・ザ・パイ」は販売実績に応じた価格でファン(投資家)から全発行各部式を買い取るそうです。

 

制作したアルバムは各iTunesStoreなどのオンラインストアで販売し、利益はアーティスト、スライス・ザ・パイ、オンラインストアの3者間取り決めの割合で配分します。

 

2008年1月現在、登録アーティスト7千人、登録ユーザーは4万人を超えたそうです。音楽業界の新しい潮流として注目されています。

 

【参考】
(1)「スターの卵を育成するネット初 音楽ファンド」、(株)講談社、COURRiER Japon、3月号
(2)「スライス・ザ・パイ」ホームページ、www.Slicethepai.com
(3)「ロイターニュース」ホームページ、2007年7月3日
(4)「音楽市場 スライス・ザ・パイ」ブログ、originalblog、伏谷博之、2007年7月6日