映画「隠し剣鬼の爪」について

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数年前に藤沢周平の小説「たそがれ清兵衛」が映画になり、その後「隠し剣鬼の爪」、今年「蝉しぐれ」が映画になりましたが、以前、映画「たそがれ清兵衛」とNHKテレビドラマ「蝉しぐれ」を観ました。

特に、「蝉しぐれ」は封建時代の下級武士の家に生まれた武士と女性のロマンスをあきらめ、忍従せざるを得ない宿命に涙したことを思い出し、未だ観ていない「隠し剣鬼の爪」も是非、観たいと思っていました。

昨日、ようやくDVD版「隠し剣鬼の爪」を借りてきて観ました。

この映画も山形県庄内地方の小さな架空の藩「海坂藩(うなさかはん)」が舞台です。
(ストーリーを90%位記述していますので、映画や小説を読んでない人は途中で止めてください。)

主人公「片桐宗蔵」役は永瀬正敏、片桐家の奉公人「きえ」は松たか子、家老「堀将監」は緒形拳、元剣術道場仲間「狭間弥市郎」は小澤征悦(おざわ・ゆきよし、世界的指揮者小澤 征爾の息子)、狭間の妻「桂」は高島礼子、片桐の妹の夫「島田左門」は吉岡秀隆(映画「三丁目の夕日」の芥川竜之介役)という顔ぶれでした。

映画の中では、北国の田舎の藩でも武士や足軽は大砲や新式銃を使った新しい戦闘訓練が始まっていることから幕末の時代で西の中国・四国、九州地方では封建体制が崩れ始めている頃の物語であることは容易に推察されました。

師走の午後、雪の降る日、「片桐宗蔵」は小間物屋の店先で、自分の家に行儀見習いに来ていた元奉公人で商家「伊勢屋」に嫁に行った「きえ」と偶然再会するがあの明るく、元気の良い娘が身なりも粗末で痩せて青白い姿に心が痛みます。

数ヶ月後、妹の夫で親友の左門から、宗蔵はきえが病であること聞いた。
実家の母親が見舞いに行ったところ、姑は一度嫁に貰ったのだから、伊瀬屋のものだ。嫁は手落ちなく看護している。知らせる必要があればこちらから知らせる。実家と言えども他人の家に干渉してくれるなといわれ追い返され、伊勢屋のどら息子の夫は母親の言いなりで埒が明かないという。

宗蔵は居ても立っても居られず。自ら伊勢屋に乗り込みます。
昔、隠居部屋に使っていたようなような古い小さな部屋に粗末な布団に寝かされ、ほとんど看護された形跡もなく放置されたていました。

宗蔵はきえのそばによるときえは生気もなく、頬の肉は落ち、別人かとおもうほど面変わりしているのみて愕然とします。
「この子わが家に行儀見習いにきて、私の母はどこへ出しても恥ずかしくないように育てた。病気など一度もしたことがなく、元気で、明るい子であった。離縁状はあとで送る」伊勢屋の姑に言い残し、宗蔵はきえを連れ帰ります。

宗蔵は以前から愛おしく思っており、きえもひそかにに慕っておりますが武士と奉公人という身分違いがその垣根を越えられず、宗像は武士として耐え、きえは頭からあきらめています。せつなく美しい愛に涙がでました。

宗蔵の家で養生し、回復したきえは海が見たことがないので海に連れていきます。そこで、宗蔵はきえの幸せのため苦渋の決断をし、実家に帰します。

ある日、宗蔵は大目付から呼び出され、家老「堀将監」から狭間弥市郎の上意打ちを命じられます。

海坂藩江戸屋敷で謀反を起こした首謀者の一人、狭間弥市郎は国元送りとなり、城下から離れた山の中にに造られた牢に入れられていたが脱走したという。

宗蔵と弥一郎は、藩の剣術指南役の戸田寛斎の門下だったが、秘剣“鬼の爪”のが伝授されたのは師範代を勤めていた弥市郎ではなく、そのころ、上達していた宗蔵にだった。

上意打ち前日の夜、弥市郎の妻「桂」は宗蔵に自分の体と引き換えに弥一郎を逃がすように頼みにきた。しかし、宗蔵は藩命に背くことはできないと帰した。

夫を助けたい一心の「桂」は、家老「「堀将監」に自分の体と引き換えに弥市郎の上意打ち撤回を約束させたが、家老はその約束を無視し、そんな約束を知らない宗蔵は死闘の末、弥市郎を討ち取ってしまった。

そこに桂が現れ、宗蔵に堀から何か伝言がなかったか尋ねられ、初めて、桂が自分の体を投げ打って堀に弥一郎の命乞いしたことを知る。約束を無視されたこと知った桂は肩を落とし、寂しげに去って行くのを宗蔵は茫然と見送るのでした。

三日後、狭間の妻「桂」は自害したことを聞いた。自分の愚かさと堀にもてあそばれたことに絶望したのだと宗蔵は思い、狭間の妻が哀れで胸が一杯になった。

そして、宗蔵は掘将監の口から桂の体をもてあそんだことを聞き出します。人の弱みにつけ込んで一番やってはいけないことをなんのためらいもなくやってのけた堀に宗蔵は激しい怒りが沸いてきた。そして、翌日、城の廊下で家老が不審の死をとげました。誰もその原因がわからず、家臣はうろたえるばかりでした。

一方、宗蔵は武士社会に生きていくことに何の未練もなくなり、武士を捨て本当に愛おしく思っていたきえといっしょに生きていくことを決心します。

宗蔵はこれまでの武士や大手商人の腐敗を見るにつけ、封建時代はもうすぐ崩れ、新しい世の中が来ることを察し、いちから出直していこうとしたのでした。

映画の原作に記述されてあるように、2つの短編小説「雪明り」と「隠し剣鬼の爪」が組み合わせたストーリーでした。大きな流れとクライマックスは原作とおりで、剣豪小説に重きを置いている小説「隠し剣鬼の爪」に純愛ものを挿入しストーリー全体をいっそう引き立て、涙を誘うほどに仕上げた本当に良い映画でした。