水不足で注目されている逆浸透膜による海水の淡水化について

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6月11日テレビ東京朝9時の「株式ワイド オープニングベル」で「逆浸透膜ビジネス」というレポート番組をやっていて逆浸透膜を使用して海水淡水化や純水化や不純物を取り除く「逆浸透膜ビジネス」は日本が世界の55%と圧倒的なシェアを占めていると伝えていました。

 

地球上では慢性的に水不足に悩まされている地域は数多くあり、最近は、地球温暖化の影響とみられる異常気象や進む砂漠化や発展途上国の工業化や人口増で水の使用量が増加しており、早急な水不足対策を迫られています。

 

現在、世界の人口は約65億人ですが2030年には80億人になるという報告がなされ、世界レベルでの水資源確保が課題になっています。

 

水資源確保の一つの手段として海水の淡水化があり、これまでコスト的に有利な蒸発法による海水淡水化の方が多く行われていましたが最近、逆浸透膜による海水淡水化が注目を浴びているそうです。

 

逆浸透膜技術の進歩でコストダウンでき、また、最近の原油の高騰で逆浸透膜法が有利になって販売が増加してきており、今後、10%の成長率が見込めるからです。

 

1960年ごろアメリカで開発されてからいろいろな材料が開発され、現在では日本は高機能な逆浸透膜の材料や製品を組み合わせた海水淡水化装置の運転コストも十分の一までになっているということでした。

 

日本の逆浸透膜メーカーとしては東レ東洋紡日東電工(三菱レーヨン、旭化成)などがあり、プラントメーカとしては栗田工業シーメンス、GE、東レなどがあると番組では説明していました。

 

私は海水の淡水化に逆浸透法が利用され実用化されていることを大学卒業後しばらくたった1970年代に初めて知りました。大学の卒業論文で海水から水酸化マグネシウムを分離する研究をやっていたこともあり、興味を持ちました。しかし、すぐ忘れてしまいました。

 

今日の逆浸透膜の番組を見て、学生時代、水酸化マグネシウムの微量な溶解度測定実験や晶析(結晶化)実験をやり分離を試みましたが良い結果が得られなかったことを思い出した次第です。

 

【逆浸透の原理】
塩分など濃度の高い水と低い水を半透膜(逆浸透膜:例:セロハン)で仕切ると、その浸透圧の差によって塩分濃度の低い側から高い側へ水だけが抜けて行きます。そして塩分濃度の高い水は薄められ浸透圧がバランスした状態で塩分濃度は等しくなります。

 

逆に塩分濃度の高い水に浸透圧の差以上の圧力をかければ、水分子だけが塩分濃度の高い水から水だけが半透膜(逆浸透膜)を通り、塩分の低い水側に移動します。この現象を「逆浸透」といいます。

 

逆浸透膜について】
1マイクロメートル=1mの百万分の一=1μm(1ミクロン=1μは旧表現)=1000nm
ナノメートル=1mの一億分一=1nm

 

最新の逆浸透膜の孔の径は0.4nm以下ですが水の分子は0.38nmの数倍大きく、海水中のナトリウムイオンは0.12~0.14nmですのでそのままでは通り抜けてしまいます。

 

ナトリウムイオンを通さないのは、孔の中の膜素材の分子に水分子が水素結合することで、実質的な孔の径を更に小さくしていることなどやナトリウムイオンの拡散速度が水より遅いことなどが複雑に絡み合ってナトリウムイオンが阻止され、水分子だけが移動すると説明されています。

 

ウイルスや病原菌は最も小さいものでも約20nmなので、逆浸透膜の孔より大きいので阻止できるといわれています。

 

【参考】
(1)「逆浸透膜ビジネス」、テレビ東京番組「株式ワイド オープニングベル」、2008.6.11
(2)「逆浸透膜」、フリー百科事典「ウィキペディアWikipedia)」
(3)「化学工学資料のページ」、新潟大学工学部、irws.eng.niigata-u.ac.jp/~chem/itou/resource/res_home.html
(4)「世界に貢献する日本の技術(日本が誇る水利用技術を例に)」、s総合科学技術会議資料、科学技術政策HP、www8.cao.go.jp/cstp/5minutes/、2007.5.18
(5)「東レ、世界で初めてサブナノメートルの孔径を制御」、東レHP、www.toray.co.jp/news/ 、2006.7.28