ノブレス・オブリージュ(高き身分の者に伴う義務)について

イメージ 1

4月22日読売新聞は野村証券の中国人社員「厲瑜(れいゆ)」(37歳)が他社の中国人友人2人にM&A(企業の合併・買収)情報を公表前に流し、約5000万円の不正な利益を得ていたインサイダー取引容疑で逮捕されたと報じました。

 

市場の公正さを守るべき証券会社で、しかも機密性を最重要とするM&A担当の社員が不正取引をし、証券市場の信用をおとしめる事件を引き起こし、そのダメージは大きいと関係者落胆していました。

 

厲瑜(れいゆ)容疑者は京都大学留学後、2006年2月に入社したばかりですぐに花形の企業情報部に配属され、2007年12月に香港の現地法人に移った将来を嘱望されたエリート社員だったのです。

 

最近、会社や国をリードしていかなければならない地位や部署にいるエリート層が倫理感・道徳感を疑う行為を起こしているケースが目につきます。

 

2007年11月の前防衛次官の収賄事件や2008年1月のフランス大手銀行「ソシエテ・ゼネラル」のトレーダーが不正取引で7600億円という巨額な損失を出した事件などがあります。

 

ノブレス・オブリージュ(Noblesse Oblige)すなわち「高き身分の者に伴う義務」ということばがあります。

 

日本では武士道、ヨーロッパでは騎士道を指しますが中国の場合は私の個人的な考えですが論語儒教に見られる「君子の道」だと思います。

 

なぜなら、武士道は孔子孟子の教えが原型として、日本民族独特の倫理感、道徳感を織り込んだ武士の守るべき掟(おきて)を作ったからです。

 

日本人の情緒について
  論語の「君子の九思(くんしのきゅうし)」は「君子の道」を表している一例と思われます。

 

【君子の九思(くんしのきゅうし)】
君子である者はいつも心に掛けていなければならない九つのことがら。
1.視は明を思い、      物をはっきり見ること
2.聴は聡(そう)を思い   話は良く聞くこと
3.色は温を思い、      穏やかな表情を保つこと
4.貌(ぼう)は恭を思い   謙虚にふるまうことふ
5.言は忠を思い       誠実に話をすること
6.事は敬を思い       行動は慎重であること
7.疑わしきは問うを思い   疑問があったら尋ねること
8.忿(いか)りは難を思い  怒るときはしこりが残らないようにすること
9.得るを見ては義を思う。  うまい話には乗らないこと

 

女性を含め、上に立つ者、国をリードしていく者は欲に眩んではいけないのです。このようなエリートは少なくとも報酬は一般の水準より高く、地位、権力を持っています。

 

地位と権力を持っているが故に倫理感・道徳感を厳しく守らなければならないのです。それがノブレス・オブリージュ(高き身分の者に伴う義務)です。

 

【参考】
(1)「野村証券社員のインサイダー事件」記事、読売新聞、2008.4.22、4.23
(2)「武士道」新渡戸稲造(著)、岬龍一郎(訳)、PHP文庫、PHP研究所、2005.12.14