4月1日の読売新聞は中国人映画監督が製作したドキュメンタリー映画「靖国」が「右翼団体の宣伝カーによる反対行動が予想され、周囲の商業施設などに迷惑を及ぼす可能性がある」という理由から東京、大阪の映画館数か所で上映を中止したと伝えました。
この映画は昨年の釜山映画祭など海外で上映され、今年の3月に香港国際映画祭で最優秀ドキュメンタリー賞を受賞した国際的な評価も高い作品である。
最初に資金援助を問題にし、試写会で映画をみた自民党の稲田朋美議員は「我々が問題にしたのは助成金の妥当性であり、映画の上映の是非を問題にしたことは一度もない。いかなる映画であれ、それを政治家が批判し、上映をやめさせるようなことが許されはならない」と談話を発表した。
以上は新聞の内容です。2年前、中国の制作の映画「南京」や「東京裁判」が中国側に偏る描写があるとされ、言論・表現の自由が制限されている中国の政治的思惑のある映画が日本で上映されないのはある程度、理解できます。
中国版「東京裁判」
映画の詳しい内容はわかりませんが記録映画であり、既に海外で上映され評価を受けており、文化庁や国会議員が試写会を見て評価しているわけです。それなのに、言論や表現の自由を唱っている日本で予想される右翼の反対宣伝を理由にドキュメンタリー映画の上映を中止した映画上映業者の行為を残念に思いました。
クーリジャポンの毎号連載のWho’s Who「世界のメディアを賑わす話題の人々」で4月号に採り上げられた「日本のタブーに挑んだ中国人監督 李纓(リ・イン)」の記事を読んだばかりでした。
李纓(リ・イン)の映画「靖国」の制作に当たって、文化庁所管の芸術文化基金が資金援助をしたことに対し、日本国内から「国民の税金でこんな映画に資金援助するなんて」と批判がありましたが芸術文化基金は「異論があっても資金提供は撤回しない」と回答し、その基金側の言葉に李纓(リ・イン)監督はいたく感動したと言っています。
さすが日本は成熟した文化国家と誇らしく思っていたからです。
それなのに、1ヶ月も立たないうちにこのような事態になり、中国食品の品質管理問題やチベット問題に対し情報の透明性や人権保護や表現・言論の自由を求める日本の影響力が低下し、日本は文化的に未熟と世界に思われ兼ねません。
来月から地方の映画館で上映が開始予定ですが妨害に備え、警察など警備をしいてでも、上映を行い、評価を世論の判断に任せれば良いと思います。