温暖化対策として炭素繊維強化プラスチック(CFRP)の使用

イメージ 1

数日前のブログに「最新鋭旅客機の販売シェア争い」について載せました。

yaseta.hateblo.jp

最新鋭旅客機や次世代自動車やロケットなど先端技術製品は脚光を浴び良く知られていますがそれらの製品を支えている部品やさらにそれらを支えている材料となるとあまり良く知られていません。

 

ブログ記事『小型旅客機市場に参入を目指す「三菱MRJ」』の【参考】に「エアバスA380」や「ボーイングB787」へ部品供給先している企業と部品名を書きましたがそれらを支えている日本が世界に誇る最先端材料があります。

 

それは東レなどが部品メーカーに供給している炭素繊維材料です。

 

1967年、当時の大阪工業技術試験所(2001年4月 独立行政法人産業技術総合研究所関西センターに組織変更)で世界で初めて、金属のピアノ線に比べて約10倍の強度をもつ炭素繊維の製法を発明しました。

 

東レなどはこれ基礎にして実用化に成功しました。

 

①衣料用にも使われているポリアクリロニトリル(PAN)繊維を特殊な方法で連続的に焼き上げ、温度200℃-300℃の空気中で加熱酸化処理します。

 

②次に窒素雰囲気で1000℃~2000℃の炭化処理を行うことにより、繊維内の窒素と水素が飛ばされ高強度の炭素繊維になります。

 

③さらに2500℃~3000℃の黒鉛化処理を行うと強度は若干損なわれるが弾性率の高い、強くて滑らかな黒鉛質の炭素繊維が造られます。炭素繊維の炭素はダイヤモンドとは組成が同じで構造がすこし違うグラファイト構造といわれる強固な分子構造でつながっているため高い強度を持っているわけです。


炭素繊維単独で使用されることはなく、プラスチックを補強する素材として使用されます。糸(炭素繊維)を一方向に並べたり、または、織ったりしてシート状にした後で、プラスチックを含浸させシートにします。このシートを「プリプレグ」と言い、必要な枚数を積み合わせて熱硬化することにより、優れた性能を持つ成形品用の材料を製造できます。

 

これらの炭素繊維材料を総称して炭素繊維強化プラスチック「CFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics)」と呼ばれます。

 

今では航空機やスポーツ用品、工業用材料などさまざまな分野に使用されるようになり、「エアバスA380」の胴体主部、垂直尾翼水平尾翼などに重量の30%~40%にCFRPが使われました。

 

そして来年就航の「ボーイングB787」の胴体、垂直尾翼水平尾翼、翼などには重量の半分にCFRP使われるそうです。

 

また、2012年就航予定の「三菱MRJ」は重量の半分以上にCFRPが使われることになるそうです。

 

経済産業省の革新的温暖化対策技術プログラムの平成15年度のテーマの一つとして平成19年度を目標に「自動車軽量化炭素繊維強化複合材料の研究開発」が進められております。

 

目的は燃料を節約し地球温暖化対策に貢献するため、従来の金属性車体重量をCFRPに換え50%軽量化を図る製造技術の開発を目指すものだそうです。

 

2007年10月26日(金)から11月11日(日)まで、第40回東京モーターショー幕張メッセで開催されましたが、トヨタが現在の環境対応型のプリウスにCFRPを採用し、重量を「3分の1」にし、その他最新技術を採用した環境コンセプトカーを参考出品したと新聞に載っていました。

 

1~2年後には車体重量が半分の軽量化された自動車が出現すると思われます。
 
【参考】
(1)炭素繊維協会「ホームページ」
(2)(独立行政法人産業技術総合研究所「ホームページ」
(3)第5回東レIRセミナー「東レの研究開発戦略」東レ株式会社、2004年10月
(4)革新的温暖化対策技術プログラム平成15年度新規テーマ、経済産業省、2003年2月