温室効果ガスCO2の排出権取引

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最近、テレビや新聞で南極の氷が解け始め、オーストラリアでは旱魃がおきているなど世界の気象に異変が起きていると連日、報道されています。

日本でもここ2年で季節はずれの陽気、大寒波、そして豪雨に見舞われ、地球温暖化が進んでいることが感じられ、環境破壊や食料不足が心配になってきています。

1997年12月京都議定書により、二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスの削減目標が先進国に対し、第一約束期間(2008年から2013年まで)に削減数値目標として1990年比、
日本  :6%、
アメリカ:7%、
EU  :8%
が義務付けられました。

その約束の第1年目である2008年を来年に控え、削減数値目標1990年比6%が困難になっていると4月5日、7日、30日の読売新聞では伝えています。

1990年のCO2の総排出量は12億3千万トンで10年経過した2000年は13億3千万トンと8.0%増加しました。この時点で、京都議定書の削減目標を考えると1億7千万トン(12.8%)も削減しなければならないからです。(2)

日本はエネルギー利用の効率化を既に高度に進めており、1人当たり資源消費量はアメリカの5分の1~4分の1、環境先進国ドイツの約2分の1、他方で1人当たり資源消費量は民生分野での自動車普及やエアコンの影響などにより増加傾向に歯止めがかからず、二酸化炭素排出量2010年見通しは1990年対比14%増とされています。したがって、日本が京都議定書を守るためには削減目標分6%分と合わせた20%を削減しなければならず、絶望的と言われています。(3)

読売新聞4月7日号に現状では京都議定書を守るためにはCO2を1億7千5百万トン削減しなければならないがその削減量の一部に経済的削減手法「京都メカニズム」の一つである「排出権取引」を採用し、チェコから排出権を購入し対応すると伝えました。

チェコでは重工業が衰退しており、2008年から2013年までに年間3千5百万トンのCO2排出余剰枠があるのでこのうち2千万トンを売却し日本が購入するというものです。

旧ソ連圏や東欧諸国では経済活動の低迷により余剰排出権が7億トン以上あるといわれています。これらの排出権取引京都議定書では認められていますが環境団体からは買い手の環境対策を遅らせるものだと批判もあります。

また、最近、石油、天然ガスの開発好調と値上がりで成長が続くロシアは2004年実績で日本の12億7千万トンより多い15億9千万トンのCO2を排出していますが削減目標は0%です。また中国は48億トン、インド11億4千万トンのCO2を排出していますが発展途上国として、その国に投資した先進国と共同で削減事業を実施し、その削減分を目標達成数値にして良いという「クリーン開発メカニズム(CDM)」を推進することが認められています。(3)、(5)

日本は省エネが進んでおり、1トンCO2を削減するのに処理費用が250ドル(1ドル120円で3万円)かかるといわれており、1億7千5百万トンを処理削減するとなんと5兆2千5百億円を負担しなければなりません。たとえば、排出権を1万5千円で50%を購入したとしても約4兆円という莫大な費用がかかることになります。

このように第一約束期間(2008年から2013年まで)のCO2削減達成は危ぶまれていますが、2013年以降の地球温暖化対策である「ポスト京都議定書」の枠組み交渉が始まり、各国の駆け引きが始まりました。(読売新聞2007.4.30)

【参考】
(1)「良く効く経済学 数量管理が容易な排出権取引を」、エコノミスト2007.2.13号
(2)「CO2の排出量の増加と要因分析」大阪府地球温暖化防止活動推進センターホームページ
(3)「CO2排出量削減をめぐる企業のリスクとチャンス」、週刊ダイヤモンド2003.7.28号 、葛原 怜
(4)「排出権取引を利用した地球温暖化対策技術の開発」、田村徹也、佐多直明、NEC技法Vol.57、2004.1
(5)読売新聞、2007.4.5、2007.4.7、2007.4.14、2007.4.30号(CO2削減コスト250ドル:読売新聞4月30日号の東京大学最先端化学技術研究センター山口光恒客員教授