石油の歴史No25【盧溝橋事件から太平洋戦争へ拡大そして敗戦】

イメージ 1

1937年(昭和12年)7月7日の夕方、支那駐屯軍歩兵第一連体第三大隊の中隊長清水節郎大尉は第八中隊を指揮し、夜間演習のため、北京郊外の盧溝橋付近の演習地に向かいました。

盧溝橋は氷定河にかかる石橋でそのたもとには乾隆帝が橋の美しさに感動し、「盧溝暁月」と筆をしたためた石碑があり、また、盧溝橋は13世紀にマルコ・ポーロが訪れたことから欧米ではマルコポーロ橋と呼ばれており、付近は風光明媚な景勝地でもありました。

1937年(昭和12年)7月7日夜10時30分頃、演習が終了した後の10時40分頃、突如として清水中隊に十数発の実弾が浴びせられました。

しかし、最初の一発は日本軍と中国軍お互い相手が先に撃ったと主張して非難しているが60年経た現在も不明で、昭和史最大の謎の一つとされています。

ブログ「幻の藘溝橋事件の中国共産党発砲説」

yaseta.hateblo.jp

これを引き金に日本軍と中国軍が衝突し、日中戦争に拡大していきます。アメリカ国内では日本軍の中国進攻が新聞やニュース映画で報道され、石油、鉄鋼など軍需物資の対日輸出反対の声がしだいに大きくなりました。

1939年ドイツのポーランド進攻で第二次世界大戦に突入し、1940年6月、日本は南方進出を開始し、オランダ領東インド諸島からの石油を確保し、戦争を有利なものにしようとしました。

1940年7月日本の戦争遂行を阻止するため、アメリカは航空用ガソリンの対日輸出を禁止します。1940年9月、日本は日独伊三国同盟を締結しました。

1941年5月石油調整官に任命されたハラルド・イキスはこのまま日本が石油を大量備蓄すると危険とルーズベルト大統領に働きかけましたがルーズベルトは石油の対日輸出禁止はしませんでした。戦争準備が整うまで日本を刺激したくなかったからです。

1941年7月日本が南部インドシナに進攻したことにより、アメリカは石油の全面禁輸を実施、イギリスも独自に資産凍結、禁輸を発表し、ボルネオ・オランダ領東インド諸島からの対日石油輸出を実施し、ついに、1941年8月、米(A)英(B)中(C)蘭(D)による石油禁輸と資産凍結の実施といういわゆるABCD包囲網が敷かれました。

1941年9月御前会議で軍部はこのまま行けば2年以内に石油が底を突くことになり、軍部は天皇に早期決戦、早期決着を働きかけます。近衛総理は戦争以外の解決策を見出そうとしますが早期解決迫る軍部に耐え切れず、1940年10月近衛内閣は総辞職、代わって陸軍大臣東条英機」が首相の座につくと11月御前会議でアメリカに最後への要求を拒否された場合、戦争に突入する提案を受け入れさせました。

11月25日アメリカのハルは中国とインドシナから撤兵すれば対日輸出を再開するという条件いわゆるハル・ノートを提案します。首相東条英機はこれを最後通牒と受け取ります。同じ日、千島列島から日本の機動部隊は無線を切り、出航しました。目的地はハワイでした。

 

1941年12月7日午前7時55分(日本時間:昭和16年12月8日未明)、真珠湾アメリカ太平洋艦隊への攻撃が開始されました。

アメリカのパンフレットにある真珠湾攻撃について

yaseta.hateblo.jp

日本軍による真珠湾攻撃アメリカ太平洋艦隊の戦闘能力を奪い、東南アジアの油田と石油タンカーなどの航行の安全を確保する側面を持っていました。

しかし、日本は戦争を決定した最大の動機である石油を忘れ、オアフ島にある石油貯蔵基地への攻撃を作戦計画にいれなかったという失敗を犯してしまいました。もし、石油基地を破壊していたならば戦争はもう2年長くつづいていたと言われています。

yaseta.hateblo.jp

戦争準備が整い、豊富な石油と物量作戦を展開したアメリカ軍に対し、日本軍は1942年6月ミッドウェー海戦の敗北後、アメリカに主導権を奪われ、1943年ガダルカナル島陥落、1944年3月インパール作戦の失敗、1944年7月サイパン島陥落、1944年10月レイテ沖海戦連合艦隊は壊滅してしまいました。

そして1944年4月対にアメリカ軍は沖縄本島に上陸し、住民を巻き込む悲劇的戦闘の末、日本軍は全滅しました。1945年8月広島、長崎に原爆を投下され、日本はポツダム宣言を受諾、8月15日連合国に無条件降伏し、戦争は終結しました。

盧溝橋での演習の小銃発射事件が引き金になった太平洋戦争は日本人250万人を含め、2000万人という途方もない犠牲者を生み、将来に禍根を残す結果なりました。

【参考】
1.「昭和史の謎を追う」上、秦郁彦、(株)文芸春秋、1993年
2.「新細日本史図説」、浜島正昭、(株)浜島書店、1995年
3.「図説世界史」広瀬啓二、成美堂出版、2006年
6.石油の世紀、ダニエル・ヤーギン(著)、日高義樹(他訳)、日本放送出版協会、1991年