「ユダの福音書」の解読者マービン・マイヤー博士講演会に出席して

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4月初め、米国のナショナルジオグラフィック協会が1700年前の幻の「ユダの福音書」の写本を解読したところ、「ユダはイエスを裏切っていない」と発表し、世界中にセンセーションを巻き起こしました。

yaseta.hateblo.jp

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その「ユダの福音書」の翻訳作業を行った米チャップマン大学聖書・キリスト教学科兼アルバート・シュバイツアー研究所所長のマービン・マイヤー博士の講演会が7月13日、日経ナショナルジオグラフィック社主催であり、出席しました。

1978年にエジプトのナイル川中流のある場所で盗掘者がパピルス文書を発見しました。
それがユダの福音書であるかは知らずにエジプト人古美術のディーラーに渡ったが盗難に合い、また何年かの後でディーラーにもどりました。

ディーラーはジュネーブやニューヨークで売ろうとするが価格の折り合いがつかず、ニューヨーク州のヒックスビルの貸金庫に保管したまま16年間眠ることになりました。貸し資金は最悪の環境でパピルスの写本は乾燥し、ひび割れ傷みが進んでいきました。

1999年になってようやく、アメリカの古美術商が30万ドルで購入し、エール大学に鑑定を依頼し、ユダの福音書であることがわかりました。

そして、2000年にマエケナス古美術財団が購入、2001年に米国ナショナルジオグラフィック協会支援のもとに、マービン・マイヤー博士らのプロジェクトチームが復元・解読を始めました。

復元不可能一歩手前で救われましたが、その復元は気の遠くなるような作業だったそうです。5年の歳月をかけようやく「ユダの福音書」は85%よみがえり、英訳されました。
そして、C14(炭素)により年代を測定すると280年±60年であり、これまでの資料や言い伝えと合っています。

新約聖書に載っている福音書マタイ、マルコ、ルカ、ヨハネのいずれにもユダがイエスを裏切り、ローマの官憲に売り渡した張本人と書かれています。

ユダはイエスを裏切り報酬を受け取ったあと、自ら首を吊った(マタイ)、体が真ん中から裂け、はらわたがでておぞましい姿で死んだ(使途言行録)という。

キリスト教美術でも、ユダはイエスに口づけしながら陰で裏切るという不名誉な姿で描かれています。

今回、復元・解読された「ユダの福音書」ではユダはイエスを裏切るが、それはイエスの要請によるものだと記述されている。

彼はイエスに頼まれたことだけ遂行し、イエスのことばに耳を傾け、イエスへの忠誠心をいささかも失わなかったのです。

ユダの福音書に描かれているイスカリオテのユダは、イエスに愛された弟子であり、親友であったのです。

ユダの福音書は本当のイエスやユダを描いたものでないという人もおり、賛否両論が沸き起こっています。

今回、発見されたユダの福音書の写本は3~4世紀と4つの福音書より遅く書かれていますが、原本はそれら4つの福音書と同じ頃、存在していたと思われますが、不明です。

新約聖書に載せた4つの福音書以外、ユダの福音書を含め、多くの福音書はすべて異端であるという教会側の考えは正しかったのかという疑問もあります。

キリスト教の歴史において、ユダはマルコ、マタイ、ルカ、ヨハネ福音書に書かれるうちに、その裏切りがだんだん強く表現されるようになり、それがユダヤ迫害につながって、金のためなら裏切るという、ユダを象徴的に扱われるようになりました。

マービン・マイヤー博士はよみがえった「ユダの福音書」が改めて、初期のキリスト教の歴史や発展、多様性について知識と理解を深めるきっかけになることを期待しており、ユダに対する憎悪の感情を消すことにより、ユダヤ教イスラム教、キリスト教を理解し、反ユダヤ主義のひとつでも打ち壊すことができることを願っていると述べておりました

【参考】「ユダの福音書の謎を追う」講演会の内容は8月末発売の「ナショナルジオグラフィック日本版9月号に」に載るそうです。