石油の歴史No2「ロックフェラーによる石油トラストの形成」

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1859年ドレーク大佐の石油発見後、ペンシルベニア州北西部のオイルクリークは石油ブームに沸き、大勢の人々が押し寄せ、掘削を始めます。
石油の生産は急激に伸び、市場は常に供給過剰になり、石油価格は急落します。井戸が枯渇するとさらに掘削を行います。そして、乱立する石油会社は混乱と無秩序の最悪の過当競争を繰り返していました。

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そんな中、石油産業に新しい支配力で秩序をもたらす男ジョン・D・ロックフェラーが登場しました。
ジョン・ロックフェラーは1839年ニューヨーク州リッチフォードで木材と塩を取引しているウイリアム・ロックフェラーの息子として生まれました。 まもなく、一家はオハイオ州クリーブランドに移り、薬品と薬草を取り扱う商売を行うようになりました。

ジョン・ロックフェラーは小さい頃から敬虔で、ひたむきで、細かいところまで行き届く忍耐強い性格の持ち主でした。父親から商売のコツを兄弟とともに教えを受けるとすぐに理解しました。
高校で最も得意な科目は数学で、特に暗算はずば抜けて優れていたということです。

1854年16歳でクリーブランドにある農産物を運ぶ船会社に就職、資金を貯め、1859年モーリス・クラークと農産物を取引する会社を作りました。1861年の南北戦争の始まりと西部開拓で農産物の需要が高まり順調に利益を増やしていきました。

そして石油の成長が見込まれると判断した1863年小さい製油所を作り、精製業を始めました。
1865年、南北戦争が終わり、経済が良くなる兆しが見え始めた頃、ロックフェラーは経営方針の違いでパートナーのクラークと袂を分かち、資産の半分である石油精製会社を手に入れます。

ロックフェラーは経営の才覚を発揮し、石油貯蔵用の樽、輸送用のタンク車、ニューヨークに専用倉庫、ハドソン川に専用ボートまで備え、精製設備の拡張、品質の維持、コストの削減を徹底し、会社の基盤を築いていきます。1867年、優秀なライバルであるヘンリーフラグラーをスカウトします。彼は期待に違わず、手腕を発揮します。

「毎日、他社の倍以上の輸送用タンク車を使用するかわりに他社より安い運賃にする」という契約を鉄道会社と秘密裡に結び、実行に移します。
圧倒的優位に立ったロックフェラーはライバル会社を次々と倒産に追い込み、買収を重ね、傘下に収めていきました。

1870年、31歳の時、標準(スタンダード)の石油製品を提供するという意味を込めてスタンダード・オイル・カンパニー・オブ・オハイオクリーブランドに設立します。そして、鉄道会社や沢山のライバル会社をつぶしては、傘下に収めていき、アメリカの精製業者の3/4を合併吸収していました。そして、スタンダード・オイルオハイオが十数社にのぼる会社を支配(信託)するというシステムを作り上げます。

1880年当時、世界の石油の用途のほとんどはランプとストーブ用で、その90%がアメリカ産のスタンダード・オイルでした。スタンダード・オイルは帆船を使い、ヨーロッパとアジアを一手に引き受けていました。後に後継者となるジョン・アーチボルトやチャールズ・プラットをスカウトし、反トラスト法をかいくぐり、買収・吸収で拡大していきます。

1882年、スタンダード・オイル企業合同組織の合法性が認められ、スタンダード・オイル・トラストが成立し、強固なものになりました。
このトラストはスタンダード・オイルオハイオを軸に約40%の石油精製業者とパイプライン業者が参加し、アメリカの石油精製業者の実に95%を支配したと言われています。

1885年、ロックフェラーはニューヨーク、マンハッタンのブロードウエイ26番地に当時、群を抜いて高い10階立てビル「ロックフェラー・ビル」を建設しました。
そして、スタンダード・トラストの本部をオハイオ州クーブランドからこの「ロックフェラー・ビル」に移転し、最上階の一室でトラストを指揮し、支配体制を固めて行ったのです。そして、ロックフェラーは政治さえも動かすほどの富と権力を握ったと言われています。

ロックフェラーは競争相手を無慈悲に切り捨てたかもしれないが、無法で無秩序で将来の見通しも定まらない産業を自分の哲学に基づき、巨大な企業組織「トラスト」作り上げ、石油産業という、世界の主要な産業のひとつを生み出したのです。

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【参考】(昔、受験のとき語呂合わせで覚えたもの)
1.トラスト
(ト)とても大きな社のもとで、(ス)すべて資本を結び
つけ、(ラ)楽々企業の独占を、(ト)取ろうと図る合同体
2.カルテル
(ル)類似の企業が集まって、(テ)手と手を固く握り締め、(ル)ルートや市場や生産量、(カ)価格の協定結びます。

【参考資料】
1.「石油の世紀」上、ダニエル・ヤーギン著、日高義樹、持田直武訳、日本放送出版協会、1991年発行
2.「石油の開拓者たち」村上勝利著、論創社、1996年発行
3.「オイル・ビジネス」リチャード・オコーナー著、富岡隆夫、三露久男訳、(株)サイマル出版会、1972年発行