

西暦2025年9月
【陰暦の今月:閏年のため七月】
[通常の年は八月]
(2025年は閏年に当り六月に続き閏六月が挿入され十三か月の年です)
季節 : 第十五節気・白露
西暦9月前半 : 9月7日~9月22日 初秋
陰暦八月節 : 七月十六日~八月一日 仲秋
花は春、花野は秋の季語。朝の野草に宿る白露に、はっきりと秋を感じるころ。
虫の音は日毎に盛んになり、命の流転、もののあわれを感じさせる。
【季節 : 第十六節気・秋分】
西暦9月後半 : 9月23日~10月7日 初秋
陰暦八月中 : 八月二日~八月十六日 仲秋
秋の彼岸。昼と夜が同じ長さになるとき。雷が鳴らなくなり、夕立も降らなくなる。
天高く澄み渡る秋晴れ、月も冴えて輝きを増してくるころ
【萩】
秋たけぬ いかなる色と 吹く風に やがてうつろふ もとあらの萩
【現代語訳】
秋が深まっていくにつれ、まばらに咲いているまだ若い萩はどんな色かと思うほど、吹く風に吹かれるまま(まわりの草に見え隠れして)すぐに色が変わってしまっている。
【語意】
[秋たけぬ] : 秋が深まる、盛りの秋になる。
[いかなる色と] : 「どのような色であるというのだろうか」と
色の変化を驚き感嘆する表現。
[吹く風に] : 「秋風に吹かれて」。
[やがてうつろふ] : 「そのまますぐに色が変わる」。
「うつろふ」は「移ろう」「色が変わる」意。
[もと] : 木の根もと
[あら] : 荒い、粗い、雑な、まばらの意で、まばらでまだ若いと解釈した。
[もとあらの萩] : まばらに咲いている若い萩。
【追記】
“この歌は、萩の葉の色が秋の深まりとともに急速に変化していく様子を詠んでいます。特に「もとあらの萩」という言葉が、まだ青々とした若い萩が、あっという間に色あせていくさまを表現しており、移ろいゆく秋の時間の流れを繊細に捉えています” と参考書には載っておりますが「もとあらの萩」を草深い草原にまばらに咲く若い萩の花の色が風に吹かれて見え隠れして色が変わると凡人解釈してみました。
【雁】
ながめやる 秋の半ばも すぎの戸に まつほどしきる 初かりの声
【現代語訳】
秋も半ばとなり、外を眺める。杉戸に寄りかかって待っていると、初雁の鳴き声がしきりに聞こえてくる。
【語意】
[ながめやる] : 「遠くを眺めやる」の意。
「やる」は「心をやる」「視線を向ける」の意味。
[掛詞] : かけことば。和歌の表現技法のひとつ。同音異義の二つのことばを重ね用いる技法。[秋の半ばも過ぎ]と[杉の戸に]を[すぎ]の掛詞で重ねている。
[秋の半ばも] : 「秋も半ばになった」の意。
陰暦の秋(初秋七月・仲秋八月・晩秋九月)の真ん中に当たる
[杉の戸] : 「杉板で作った引き戸」。平安期以降の邸宅建築の特徴。
[まつほどしきる] : 「待っていると(声が)しきりに聞こえてくる」。
[しきる] : 「頻繁に繰り返す」「しきりに鳴く」意。
[初かり] : 「初雁」。秋の初めて渡ってくる雁。
【追記】
秋が中頃になり、萩の花が咲き、渡り鳥の雁の声が聞こえるという季節感豊かな和歌です。