「徒然草」は、鎌倉時代末期の歌人・随筆家である吉田兼好が著した随筆です。
兼好は若くして朝廷の官職を辞し、隠遁生活を送りながら、自然や風俗、生活、思想など、様々なテーマを240段余りにわたって書き綴ったのが「徒然草」です。
さりげない話の中に鎌倉末期の社会の様相と時代の転換を引き起こした人物の名言や日常のふるまいが表現されていたりしています。
兼好が生きている鎌倉末期について、現在の世は昔の政治を忘れ、贅沢と華美に浸っていると批判し、「何事も古き世のみぞ慕わしき」と古代を賞賛し、特に、901~958年(平安時代)「いにしえの聖の御代」として重要視していたようです。
武士に政権を奪われ、財政が5分1に縮小した朝廷に仕えた兼好は宮廷生活の経験を語り、貴族文化が栄えた平安時代の朝廷の生活を憧れをもっていることがわかります。
醍醐天皇・村上天皇は摂政・関白を置かず、天皇親政により律令体制の維持をはかったので、後世、天皇政治の理想とされ、「延喜・天暦の治」と呼ばれました。
徒然草関係年表をみると徒然草の各章段は飛鳥時代から鎌倉時代末期までの約700年間に起きたことがらを綴っていることがわかります。
【参考】
1.「徒然草の歴史学」五味文彦、朝日選書557、朝日新聞社、1997・5・25
2.「新編 日本古典文学全集 44 方丈記 徒然草 正法眼蔵随聞記 歎異抄」神田秀夫 永積安明 安良岡康作、
小学館、1995・3・10
3.「徒然草諸注集成」、田辺爵、右文書院