米中貿易戦争! 新冷戦時代へ突入か?

f:id:yaseta:20190725190622j:plain中国は政府による国内企業への過剰な補助金、中国進出の外資企業に技術移転を強要、不正な手段による先進技術の取得、不十分な知的財産権の保護など不均衡貿易で急速に経済成長を遂げ、海外市場シェアを拡大させています。


特にアメリカの対中貿易赤字は年々増大し、2018年の貿易赤字は前年比10.4%増の8787億200万ドル(約98兆4千億円)となり、2006年以来12年ぶりに過去最大を更新しました。


対中貿易赤字は全体の48%と約半分の4192億ドル(約47兆円)となり、11.6%増え2年連続で最大となりました。ちなみに対日貿易赤字は全体の8%で679億ドル(7兆6千億円)でした。


アメリカは対中貿易赤字を膨大にしている問題の解決としての中国に構造改革の実施を再三再四、要求していかました。しかし、中国は「一帯一路」「中国製造2025」などは経済運営の核心である、国家の核心と尊厳は譲れないとして構造改革には消極的でした。


そして、アメリカは2018年1月、3月の中国全国人民代表大会全人代)と中央委員会全体会議(中全会)の決議と外交方針を知るに及んで、アメリカはこれまでの国民が豊かになれば自由・民主主義国家に仲間入りするだろうと信じ、経済・技術協力してきたが取返しのつかない間違いであったことを思い知らされたのです。


アメリカ政府の防衛政策担当のマイケル・ビルズベリーは2015年に彼の著作「China2049」で警告していましたが遅かったようです。


世界の覇権を狙う中国の100年マラソン計画

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2018年全人代と中全会の決議
1.共産党および習近平の指導思想の明記
2.国家主席の「2期10年」の任期撤廃
上記を含む憲法改正案が可決され、習近平国家主席共産党総書記に権力が集中する一極体制が確立


習近平独裁政権の外交方針。
1.主権を堅持、毅然とした姿勢で貫く → 領土、領海を譲らない。台湾・香港に厳格な対処。
2.責任ある大国として振る舞う →偉大な中華民族の復興。世界をリードする。
3.新たな国際秩序の構築へのチャレンジ → 欧米主導の世界秩序を変える。新興国の代弁者となる。

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このまま経済優位のまま西欧諸国と全く異なる思想を持つ習近平独裁政権の外交方針を推進されると経済だけでなく軍事力もアメリカと肩並べやがて追い越し、国際秩序が変化してしまうとアメリカは焦り始めました。


そこで、トランプ政権は2018年7月、中国の経済成長の勢いを止めるべく経済制裁を加えることにしました。対中制裁関税第1弾としてアメリカへの輸出製品の半導体など818品目に25%の制裁関税をかけました。


これに対し、中国は報復関税で応え、そして、第2弾、第3弾の制裁関税と報復関税の掛け合いとエスカレートしていき、貿易不均衡だけでなく、この対立の根本にある先端技術の覇権争いが明らかになってきました。

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これまでアメリカは中国のハッカーアメリカ企業社員による先端技術の窃盗被害を受けていたが、2018年から逮捕される事件が相次ぎ、11月には中国国有半導体企業「福建省晋華集成電路」が米半導体大手から企業秘密情報を盗んだ事件が発覚しました。


2018年12月5日、世界第2位の中国通信機器メーカー華為技術(ファーウェイ)の孟晩舟(メン・ワンツォウ)最高財務責任者(CFO)がカナダで逮捕され、米中覇権争いは最先端技術、安全保障分野に拡大し、本格化してきました。


孟氏は、人民解放軍出身、ファーウェイの創業者、任正非(レン・ツェンフェイ)・最高経営責任者(CEO)の娘です。この事件は2016年に孟氏はアメリカが課しているイランなどの制裁国家への輸出規制をくぐり抜けるため米金融機関に嘘の報告をした詐欺容疑でアメリカがカナダに孟氏の逮捕を要請したものでした。


その後も構造改革を求めて貿易協議を行いますが進展は見られず、2019年5月10日に第3弾の制裁関税25%に引き揚げ実行すると米中協議は中断しました。


アメリカは2019年5月13日3000億分に第4弾制裁関税を最大25%に引き上げることを表明し、5月15日にはファーウエイへの輸出を事実上禁止することを表明すると中国は第3弾報復関税として6月1日最大25%に引き上げを実施した。


身近な製品スマホ・衣料品に25%の関税がかかれば中国とアメリカに与える影響は大きく、両国わせて世界経済の4割を占める大国の経済悪化は世界恐慌を起こしかねない結果になります。


2019年6月29日大阪で開催されているG20に合わせ行われたトランプ大統領習近平国家主席の会談で5月から途絶えている貿易協議の再開で合意し、制裁関税第4弾は先送りになり、また米企業の華為技術(ファーウェイ)への部品輸出も2019年8月19までの間、認めることになり、最悪の事態は回避されました。


この米中貿易戦争の根底には自由・民主主義と共産主義という全く異なる考え方があります。かつてアメリカと旧ソ連はこの思想の対立で冷戦状態にありましたが、ソ連は1991年に崩壊し、共産主義ソ連は74年間(1917~1991年)で消滅し、ロシアに生まれ変わりました。


2018年から始まったアメリカと共産主義中国の対立は新しい冷戦を生み出しました。中国の崩壊がソ連と同様とすると中国建国は1949年なので74年を加えると2023年に崩壊することになりますが、現在の両国の技術・経済環境を考慮すると明らかにあてはまりません。


アメリカは中国製造2025または100年マラソン(中国建国100周年計画)のゴールの2049年までに覇権争いから中国を追い落としたい」と素人の私は勝手に思っています。

 

【参考】
(1)「コラム 習氏の中国 見えてきた異質性の正体」、西濱徹
 第一生命経済研究所 主席エコノミスト、2018.3.20
(2)「読み間違えた西側」NewsSphere(Webオンライン)、2018.3.24
(3)「米中対立の根源 経済の構造問題」、2019.6.16
(4)「米中貿易 着地見えず」、読売新聞、2019.6.30